L: Guild F-47M (F-47 Special Reserve Cocoboloと同寸・同形)
R: Gibson 60th Anniv. J-185 Quilt Custom
画像は Guild F-47M (2) vs Gibson J-185 から
本器F-47 Special Reserve Cocoboloをギターのボディ形状のカテゴリーに当てはめるとすれば何であろうか。
下部幅は15 3/4インチ。各部サイズは以前書いたF-47Mの表側と同じなので、Guild F-47M (2) vs Gibson J-185の項→
コチラ をご覧いただければ幸いだ。画像もその時のものを流用している。厳密には、F-47Mはボディの表側と裏側のサイズが少し違うという発見をしたが、本器は表裏ともF-47Mの表側のサイズと同じ(F-47Mはアーチバック的サウンドを意識し、大きめのバックがエネルギーを収束させながらトップ側に跳ね返す設計なのかもしれない…)。
Guild F-47M (2)~(4) vs Gibson J-185の項で引き合いに出したGibson J-185は、現代の多くのブランドや製作家たちが発展させてきたスモール(orセミ)ジャンボの原器みたいな存在である。約16インチのころんとしたあの形は、19世紀には既にあり、Larson兄弟らのモデルにも見られる。だからJ-185をスモールジャンボの原器と言うのは正確ではないのだが、今に至る大ブランドが世に広く知らしめたのは事実であろうし、そのJ-185を今日の作り手が一つの手本として参考にしたのも確かだ。
あの時私自身Gibson J-185を比較対象にしたように、Guild F-40系もスモールジャンボにカテゴライズしてもいいのだが、様々なメーカーや手工品でスモールジャンボと呼ばれるものはJ-185のようなころんと丸い形が多く、私もスモールジャンボと言えばそういった形のものが頭に浮かぶ。Guild F-40系は、上部幅が少しだけJ-185より細く、くびれやお尻の曲線も微妙に異なり、若干面長だ。一般的スモールジャンボのイメージからは微妙にずれる。
果たして、GuildはF-40系をスモールジャンボと称さず、グランドオーケストラと位置付けている。(現在F-40系は全廃されているため(いずれ復活すると期待)、過去の公式HPデータを探ると、F-47Mの項に記載されている)。グランドオーケストラとは何ぞや。
ギターのカテゴライズなんて、ある意味どうでもいい話だが、暫し我慢していただければ幸いだ。カテゴリーやその名称は、メーカーによってもまちまちで曖昧なものではあるのだが、わりと一般的に使われている呼称としては、概ね17インチ級がジャンボ(orスーパージャンボ)、16インチ級がスモール(orセミ)ジャンボ(17インチをスーパージャンボと呼ぶなら16がジャンボとなる)、スモールジャンボとOMの間(下部幅か胴厚、もしくはその両方がスモールジャンボ以下、OMより大の範囲)がグランドオーディトリアム、OMとか000といった15インチ級をオーディトリアムとかオーケストラ、00位の14インチ級がグランドコンサート…といった分け方が多いようだ。(○○インチはおよその数値で、メーカーによって微妙に異なり、17インチ級は16 3/4インチ、16インチ級は15 3/4インチ、15インチ級は15 1/8インチ、14インチ級は14 1/8等々含む)
ちなみにFurchフォルヒは、17インチ級をスーパージャンボ、16インチ級をグランドオーディトリアム、OMをオーケストラ…と呼ぶ。Taylorテイラーは17インチ級をグランドオーケストラ、16インチ級のうち16 1/4インチをグランドシンフォニー、16インチをグランドオーディトリアム、15インチをグランドコンサートと呼ぶ。
Guildの言うグランドオーケストラとは何ぞやという話に戻す。もう一度言うと、カテゴリーやその名称は、メーカーによってもまちまちで、現にTaylorとGuildではグランドオーケストラと称するカテゴリーのボディサイズがまるで違うのだが、Taylorのように17インチ級をグランドオーケストラと呼ぶのは少数派だと思う。そこで私なりの見方を申せば、OMをオーケストラと呼ぶならその一回り大きなものがグランドオーケストラということになり、Guildの言うグランドオーケストラは、一般的に言うグランドオーディトリアムとほぼ同義と位置付けてもよいと思う。以下、グランドオーケストラ=グランドオーディトリアムとして書く。
ギターのカテゴライズなんて、ある意味どうでもいい話、と書きながら、わかりにくい文章を延々続けているのは、本器F-47 Special Reserveの音色傾向をギターのカテゴリーという角度からみると少しわかりやすいかもしれないと思っているからだ。続く…
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2017/03/17(金) 00:26:42 |
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前項でマダガスカルRWとココボロのことを書いた。これまでにも幾つかローズ系の材について私なりに感じる特徴を書いたことはあり、一部重複するが、あらためて私が知るものを簡単に列記してみる。異論反論歓迎。
【ブラジリアンRW】
クリアでキレる硬質感と、音の成分がぎっしり詰まった濃密感(コク)、の両方が高次元でバランス。力強さと美しさのバランスも同様。高中低域のレンジバランスも良好。王様。
【カンボディアンRW】
音の要素、バランスともにブラジリアンRWに極めて近い。硬質感と濃密感のバランスはブラジリアンRWより僅かに濃密感寄り。材が少ないのか、ギターの数が非常に少なく、一般論と言う自信はないが、ブラジリアンRWと聴き分けるのは難しいかもしれない。アジアンRWと呼ばれる場合もある。
【マダガスカルRW】
ブラジリアンRWと比較すると、コクは僅かに下がるがクリアネスはやや上がる印象。中高域の倍音はブラジリアンRWにも勝る色気と繊細さ。ブラジリアンRWよりやや女性的なイメージで、ナチュラルなコーラス感も美しい。中高域の優美さが印象的なせいか、低域の迫力はブラジリアンRWに半歩譲る。ブラジリアンRWが王様なら、女王。
【ココボロ】
硬質感と濃密感のバランスはやや濃密感寄り。中高域の倍音はマダガスカルRWほど華麗ではないが、ブラジリアンRWにほぼ匹敵する。低域の力感はマダガスカルRW、ブラジリアンRWを凌ぐ。低音にずっしりした質量感があり、ローズ系の中でも最重量級の重低音。ギターによっては音がヘビー過ぎて鈍重な印象に繋がる場合もあるが、エイジングに時間をかければブラジリアン同等以上のポテンシャルを示す可能性ありとみる。
【ホンデュラン(ホンジュラス)RW】
マダガスカルRWやココボロのような、部分的にブラジリアンRWを超える個性は無いが、全ての要素をブラジリアンRWに準じて程良く持ち、全体としてブラジリアンRWに非常に近いバランスを持つところは、マダガスカルRWやココボロに勝る点。レンジは高域側低域側ともカンボディアンRWやブラジリアンRWより僅かに狭い印象を受ける場合がある。
【ガテマラン(グアテマラ)RW】
クリアで分離が非常に良い。濃密感はあまりなく、あっさりすっきり味かも。経験数は少ない。
【インディアンRW】
ローズ系の中で、まろやかさやしっとり感に最も優れる印象。高音に伴う倍音感は十分あるが、低音に伴う(特に6弦)倍音感はやや控え目(必ずしも欠点ではない)。ブラジリアンRWが持つ、やや金属的な硬質感は無いが、高域から低域に至る周波数レンジのバランスのありようや透明度はブラジリアンRWに非常に近い。同じくブラジリアンRWに近いレンジバランスを持つホンデュランRWよりもフラットかつワイドなレンジの印象を受ける場合がある。
【アフリカンブラックウッド】
カンボディアンRWと同程度にブラジリアンRWに極めて近い音。カンボディアンRWより硬質感寄り。倍音がブラジリアンRWより僅かに少ないかもしれないが不足感なく、ブラジリアンRWのビンテージギターに似る印象。ローエンドはブラジリアンRWより低い音域まで出る印象でココボロと同程度か。ココボロは最低域の少し上の音域も伴った重ための音だが、アフリカンBWはもう少しフラットで、ブラジリアンRWをも凌ぐスピード感のある低音。
※私が知る限りMartinはアフリカンブラックウッドの使用例はまだ無いと思う。それ以外は、多数のカスタムMartinの新品価格から類推される、Martinにおけるローズ系の材の高額順に書いた(モデルや材のグレードで逆転する場合はままある)。Martinは他にアマゾンRWも使っていて、ホンデュランRW辺りと似たり寄ったりの価格帯である場合が多いが、私はまだ弾いたことがない。
※他のメーカー、製作家のオプション価格の順位は必ずしもMartinと同じではない。
※アフリカンブラックウッドは、作り手によってブラジリアンRWと同程度以上の価格設定の場合もあれば、マダガスカルRW程度の場合もある。
さて、私の好みの音を出す材の順位はMartinとは異なる。
アフリカンブラックウッドも加えて、今のところの私の好みと思える順に書くと…
ブラジリアンRW、アフリカンブラックウッド、カンボディアンRW、ココボロ、マダガスカルRW、ホンデュラン(ホンジュラス)RW、インディアンRW、ガテマラン(グアテマラ)RWの順となる。
上記は、過去3XX本の経験から、材単体としてみなした場合に、私の好みの音を出すのは概ねこの順かなぁと思うに至った、私なりの標準的な順位に過ぎない。隣り合わせの材種の順位は微妙だ。ローズ系以外の材は比較対象に入れていない。
そしてここが肝心なのだが、「材単体としてみなした場合」というのを言い換えると、どのメーカー・製作家か、どのような音づくりのギターか、どのような形式(サイズや形など)のギターか、私がどのような音をそのギターに求めるのかによって、この順位は入れ替わるということ。前回、「作り手の音づくりやギターの形式によって、私のストライクゾーンに入りやすい材の順位は入れ替わる」と書いたが、同じ意味だ。ローズ系の王様はブラジリアンRWとこれまで何度か書いてきたと思うし、そのイメージは今も変わらないのだが、どんな場合でもローズ系の材の中で最高の選択たり得る訳ではない。
続く…
2017/02/27(月) 03:12:46 |
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Guild F-47 Special Reserve (not GSR Ltd.) (Adirondack or Carpathian?) Red Spruce / Cocobolo
Gotoh Gold open gear tuners with Ivoroid Guild split "G" logo buttons
Regular label & Special Reserve label
本器の見た目の特徴は、ボディ内に通常ラベルとSpecial Reserve専用ラベルの2つが貼られていること、ペグはゴールドのオープンタイプ(ゴトー)でノブにGロゴの押し型のある特別仕様、12F指板にもGロゴインレイ。この頃の通常のF-47との違い(F-47Mの項ご参照)はヘッドのインレイがチェスターフィールドでなくGであることと、12FのGロゴ。なお前項に書いたGSR(Guild Special Run)にもココボロB&SのF-40があり、これとの外見上の違いは、指板インレイがGSR F-40はドット、本器はスクエアで、その点はチョイと本器の方が上位仕立てとなっている。ボディ内部の設計にGSR F-40と本器で違いがあるのかどうかはわからない。ヘッドと12FのGインレイ、、ペグノブの押し型はGSRの大半のモデルにも共通する特別仕様。押し型の付いたアイボロイドノブは、ぐっと噛んで歯形が付いたミルキーみたい。全くどうでもいい話だ。
音色の印象は、本器とほぼ同時期のメイプルB&SのF-47Mとはがらりと変わる。F-47Mの項でも書いたように、あちらは意外にGibson的な野趣もあり、それを強調するようにガンガン弾くのもいいし、メイプルならではの反応を活かしてラグタイム等の素早いフィンガーピッキングも小気味いい。名手Doyle Dykesドイル・ダイクスのシグネチャーモデルはF-47をベースとしたメイプルB&Sのカッタウェイモデルで、のちにはコアB&SやローズB&Sのバリエーションも出た。本器は、一聴したところ上質感がまず耳を捉える。一音一音力強くそして美しく、ずっしりした低域から高品位な高域までワイドレンジ。要するに、非常にハイグレードな雰囲気を湛えた音色だ。高級手工品に匹敵する美音で、トラッドな雰囲気も併せ持っているところは、MartinならかつてのMarquis Madagascarシリーズのようなクオリティ感。多くの方が触れる機会のあるモデルなら、Marquis Madagascarのように人気を集めただろうに、こんなワンオフ的な存在であることが残念でならない。
F-47Mと本器の音色の印象の違いは、メイプルとココボロの違いだけでなく、カスタムメイドならではの作り込みの違いがあるからなのか、設計上の微妙な違いがあるからなのか、私にはわからないのだが、いずれにしても本器の音色の大きな要素としてココボロが作用しているのは確かだ。ココボロの名はご存じの方も多いと思うが、ブラジリアンRW(ハカランダ)近似の特性を持つと言われる材の一つで、Martin Marquis Madagascarにも使われていた、マダガスカルRWに次ぐ位メジャーな存在と言える。
当ブログでココボロB&Sのギターを紹介するのは今回が初めてだが、過去には幾つか経験はあり、それら全般からマダガスカルRWとココボロという材を比較すると、概ね次のような印象を受ける。マダガスカルRWはブラジリアンRWにもまして華麗で繊細な中高音を出す印象があり、透明度もブラジリアンRWよりも若干高い印象を受ける。低音は(中高音の印象に相対して感じるだけかもしれないが)ブラジリアンRWよりやや非力だ。一方ココボロは、ブラジリアンRWにもまして重厚な低音を出し、濃密感が強い音だ。中高域はマダガスカルRWほど華麗ではないものの、ブラジリアンRWにほぼ準じた倍音感で不満は感じない。
マダガスカルRWとココボロとどちらが私の好みの材か。強いて言えばココボロである。Martinの価格序列は基本的にマダガスカルRWの方が上位だが、私の好みは逆だ。マダガスカルRWのギターを弾くと、ブラジリアンRWだったらなぁと囁く悪魔が私の心の片隅に出現することがあるのだが、ココボロの場合はなぜかそれが無い。ただし、ややこしいことに、現実に世にあるギターの中で、マダガスカルRWよりココボロの方が必ず好きと思えるかどうかは別だ。ココボロは重厚感が行き過ぎて鈍重な印象を受けるギターである場合があり、そのモデルならマダガスカルRWの方が素晴らしいだろうと感じることも少なくないからだ。ドンズバのストライクゾーンに嵌れば、おそらくココボロの方が私は好きだが、要は、作り手の音づくりやギターの形式によって、私のストライクゾーンに入りやすい材の順位は入れ替わる。その意味では、ローズの王様的な存在であるブラジリアンRWとて例外ではなく、ローズ系の材の中で常にナンバーワンである訳ではないのだ。本モデルにブラジリアンやマダガスカルRWのバージョンは存在しないはずだから現実に比較しようもないのだが、本器の音に重苦しい印象は受けず、比較するまでもなく私のストライクゾーンに嵌っている感覚がある。
続く…
2017/02/26(日) 23:05:48 |
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Guild F-47 Special Reserve (not GSR Ltd.)
(Adirondack or Carpathian?) Red Spruce / Cocobolo
Fender期のGuildで少数の限定モデルが製作されていたことはあまり知られていない気がする。数種ある限定モデルがそれぞれいつリリースされたか公式な記録を見つけられないが、Guild 50周年の2003年から同60周年の2013年の間頃にわたっていると思われ、50周年にはイングルマンスプルースT・ブラジリアンRW(ハカランダ)B&SのD-55が50本、60周年にはオールコアのF-30が60本製作されたことは確かだ。
限定モデルの大半はGSR(Guild Special Run)という冠が付され、公式にリリースされたものだ。Wikipediaに一部記されているが全部ではない。私が知るものでは、たしかF-20,30,40,D-50 のココボロB&S(このF-30はカッタウェイ&PU付のF-30CEのみだったと思う)、F-30のメイプルB&S、F-40のマッカーサーエボニーB&S 、F-47のコアB&S(カッタウェイ有のCEのみと思う)など。各トップはカルパチアン(レッド)スプルースの仕様が多く、イングルマンTのモデルもあったが、シトカのモデルもあったかもしれない。F-30のココボロB&Sなんて、ポール・サイモンPaul Simonのカスタムオーダーで知られるブラジリアンRW(ハカランダ)B&SのF-30 Specialに非常に近い仕様だ!と思ったものの、カッタウェイ仕様しかなく、「なんでノンカッタウェイを出さないんだ!」と心の中でツッコんだのを覚えている。これらGSRは日本では殆ど販売されなかったはずで、私の記憶では東京のシモクラがほんの僅か、それも米国で公式に販売されていたGSRとしてではなく、ワンオフカスタムとかプロトタイプとして同等仕様のものを一部、数本だけ売っていたように思う。
GSRとは別に、一部優良ディーラーに対してのみ供給されたワンオフに近いカスタム品も存在している。それらはSpecial Reserveという名称が付され、ボディ内には通常のラベルに加えてSpecial Reserve専用ラベルが貼られている(上記のシモクラの販売品の中にSpecial Reserve品があったのかどうか不明)。このSpecial Reserveは、GSRにもましてレアな存在で、今回ご紹介するのは偶然出くわした1本である。Special Reserveとして他にどのようなカスタムが製作されたのか全容は知る由もないのだが、ブラジリアンRW(ハカランダ)B&SのF-30がSpecial Reserveとして製作されていることは確認している(2本製作の模様)。
本器はこの時期の通常の丸ラベルにF-47 Special Reserveというモデル名とシリアル(2008年製)が記載されている。Special Reserve専用ラベルには提供先の店名も印刷され、おそらくGuildの責任者と思われるBillナントカ氏のサインが入っている。公式データが見つからない(たぶん元々発表されていない)ので、トップはアディロンダックかカルパチアンか、それら産地の付かないパターンなのか不明だが、いずれにしてもレッドスプルースであることは木目や音色から明らかである。
この頃のGuildは、アディロンダックやカルパチアンといった呼称の付かないレッドスプルースをF-30 Aragon(Standardはシトカ)やD-50 Blue Grass Specialに使用していた時期がある。Fender期全般にわたってそれらのモデルがそうした仕様だった訳ではなく、短期間に仕様やモデル名はコロコロ変わっていた(例えばF-30にAragonとStandardの2種あった時期もあれば、愛称の付かないF-30の1機種のみの時期もあり、それはシトカTだったような気がする。またFender期のD-50もBlue Grassが付かないものやシトカTの時期はあったはず)と思う。ちなみにGuildが公式にアディロンダックという名称を表記していたことはFender期及びそれ以前にはおそらく無く、その方式に倣えば単にレッドスプルースというのが正確かもしれない。(現Guildはブレーシングにアディロンという表記を採用している。)
ただ本器の木目はFender期の通常品のレッドスプルースより端正で、その点から類推すれば、よりグレードの高いレッドスプルース、又はアディロン産レッドスプルースを使用している可能性もあるし、カルパチアンの可能性もある。一般にカルパチアンスプルースはアディロンと同種のレッドスプルースである場合が多い(レッドスプルースでないカルパチアンやアディロンも稀にあると思う)が、それらカルパチアンの木目はアディロンより端正なものが多いことと、先述のGSRでカルパチアン仕様が多かった点も考慮すると、本器もカルパチアンの可能性は否定できない。
ちなみにカルパチアンは、レッドスプルース共通の特性として、アディロンに似た高反発かつウォームな音色を持つと言われるのだが、私の経験ではアディロンほどそれらの特徴は濃厚でなく、逆に、一般にヨーロピアンスプルースと称される材に似たフラットワイドで繊細な要素も感じる場合もある。本器の場合はほぼアディロンのニュアンスだと感じるので、私の経験からすればカルパチアンではない可能性もあるのだが、カルパチアンの個体差もかなり幅広いだろう(かつてご紹介したGreven Prairie Stateのカルパチアンは、アディロンらしさよりかなりヨーロピアン寄りな印象もある)し、結局私には本器が何レッドスプルースかは判断できない。
もちろん本器は、スペシャルリザーブの文字通り、とっておきの材としてアディロンダック産レッドスプルースを使用している可能性もあり、先述の通り私の経験したカルパチアンよりは、一般に言うアディロンの音色に近いと感じるのだが、とどのつまりレッドスプルースであれば、その前に何が付こうが付くまいがどうでもいい話ではある。なぜならアディロンと公称しているメーカーのトップ材が本当にアディロンダック産かどうかそもそも不明である上、アディロンと付かないレッドスプルースが、アディロンと称する材に一律に音色が劣るとかニュアンスが異なるという印象も過去実感したことがないからだ(アディロンやレッドでありさえすれば全て同じという意味ではない)。ご承知の通りMartinは常にアディロンと表記する(アディロン産かどうか知らない)のに対し、Gibsonはモデルによってアディロンが付く場合と単にレッドと言う場合がある(区別の根拠が何かは知らない)。中古品になると、GuildもGibsonも元々レッドスプルースが公式表記だったモデルに関しても全部アディロンと書く店が世界的に多い。つまりアディロンは本当にアディロン産であるかどうかに関わらず、新品でも中古でもレッドスプルースの代名詞的に使われてしまっているのが実態である。結局どうでもいい、という事を申し上げたかったのだが、ああややこしい。
続く…
2017/02/25(土) 00:26:05 |
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